2007年10月13日土曜日

【映画】花とアリス


 ネット上の映画サイトでは非常に評価が高い作品。その評価の多くが岩井俊二監督とアリス役の蒼井優に向けられている。

 盛り上がりらしい盛り上がりもなく、緩めなコメディタッチで過ぎていく映画。沢山の有名俳優が出ているが、ほぼカメオ出演。テリー伊藤の先生は怖すぎ(笑)。吉岡秀隆なんて声しか出てこない(笑)

 ストーリーはほとんど花こと荒井花(鈴木杏)、アリスこと有栖川徹子(蒼井優)、宮本雅志(郭智博)の3人だけで進む。女優2人の演技は巧いけど、郭智博はどーにも大根役者(苦笑)

 観はじめた序盤は個人的には外したかなと思ったが、見終わった時はジーンと来た。ストーリーに散りばめられた数々の伏線から花とアリスの人物像が浮き彫りとなり、特にアリスの人物像が蒼井優の名演と相まって心に残る。

 伏線がふんだんに盛り込まれてることもあって、一度観た後、もう一度見直したくなる作品。高校生の青春映画だけどおぢさんにもおススメ。特に娘がいる人は観るべし(笑)

《以下ネタバレと個人的な感想》

 ハナとアリスは親友同士の中学3年生。冒頭の冬の朝の通学シーンでハナは自由奔放なアリスに振り回されていることを印象付けます(ここで出てくる駅名に注意!)。

 アリスは遊びでちょっとカッコイイ(?)高校生を尾行し、ハナはその高校生と一緒に通学している高校生に一目ぼれする。

・・・で、いきなりストーカーに(笑)

 2人はそろって手塚高校に進学。ハナは一目惚れした宮本先輩がいる落研に入部。でも宮本先輩は寿限無の暗唱に命を懸けているようで、ハナの顔すら覚えてくれない。

 そんなある日、例によってストーキング(笑)していた宮本先輩が、寿限無の暗記に没頭するあまり、半開きのシャッターに頭をぶつけて転倒。軽い脳震とうを起こす。

 意識が戻った宮本先輩に記憶喪失で2人が交際したことを忘れていると嘘をつくハナ。
 簡単に信じてしまう宮本先輩(ぉぃぉぃ

 しかし、ひょんなことから撮り貯めた宮本先輩の写真を見られ、ハナのストーキング行為がばれそうになるが、アリスが宮本先輩の元カノで彼女が撮った写真だと更なる嘘を信じ込ませる。

 自分の記憶を取り戻そうとアリスと会ううちにアリスに恋心をいだく宮本先輩。アリスはハナのためにうまく取り繕うとするうちにミイラ取りがミイラになって...


 ある意味かなりバカバカしいというか他愛もない。「現実にはあり得ねーだろ」みたいな。
 でもそれが主役(特にアリス)の人物像を丹念に描き出すことでとても良い映画になっている。

 そのアリスの人物像を映し出すために絡んでくるのが、アリスのタレント活動と家庭事情。

 アリスは街角でタレント事務所にスカウトされてあちこちのオーディションに挑戦するが、それがもうもの凄い大根役者(笑)。

って、そもそも役者に挑戦するの無理だろ?やるならモデルだろ?

 ただ、設定上メイクをわざと野暮ったくしているようで、同じ自然なメイクではさらに2年前の映画デビュー作「リリィシュシュのすべて」の方が可愛く思える。正に“なかなか合格しそうにないタレント(の卵)”の雰囲気。

 その大根役者ぶりを宮本先輩を騙す時にも発揮。特に教室に宮本先輩が尋ねて来たときの反応が爆笑もの。その後もハナと宮本先輩の3人でいる時にハナに強要されて棒読みで“会話”するシーンも。

 オーディションでは、キットカットを食べるシーンで他の役者が可愛く食べる中、一人物凄い変顔(笑)。蒼井優、ちょっとメイクすればアイドルでも売れた(事実メイド姿のアイドルビデオも出してるし)のに役者魂だね!

 そんな中、涙を流す演技を要求され「悲しいことを思い出して」とアドバイスされて駄目で「くしゃみが出そうな時を思いだして」と言われても駄目。面接終了後にクシャミだけ出るシーンがあって、実はこれも伏線。芸が細かい。

 そしてアリスの家庭事情。

 前半、相田翔子演じる謎の女性が男(阿部寛)を連れてアリスのいるファーストフード店に現れ、「さようなら、ハナちゃん」を連発してアリスを店から追い出す(笑)

 なんじゃこの変なお姉さんは…と思ったらアリスの母!?(爆)

 ウソだろ、おい?って、母役の相田翔子は当時実年齢は34歳(設定は不明)、そしてアリスは高1なので設定は16歳。相田翔子は実年齢よりずっと若く見えるら、この二人が母子!?という感じ。もちろんそれを狙った配役だろう。

 余談だが、以前TVで素顔でも美人な女優を他の女優にアンケートしたら真っ先に相田翔子の名前が挙がっていた。相田翔子はウィンクでデビューした頃から変わらず可愛いね。

 その次のシーンで有栖川家が母子家庭なのがわかる。荒れ放題の家の中。母は家事を放ったらかしで男と遊び歩いているってことか。
 夕食を作るのもアリス、食事中「君も大人なんだし、恋愛はちゃんと結婚を前提にしてくださいね」と母に釘をさし、新聞を見て「円が下がった」とボソッとつぶやくアリス。母より大人ってかオヤジか?(爆)

 そして、アリスの高校進学祝いを兼ねて父子が湘南で会う。

 父役の平泉成は実年齢が当時60歳(設定は不明)。妻子とはかなりの年齢差。母親に全然生活臭がないから父親は貿易商の経営者で、母親は元愛人かと思ったが、家族3人の頃の思い出をアリスが語るので離婚したというかな?

 おそらく、何もできない妻に愛想を尽かして(或いは妻の浮気もあったかも)別れたけど、それでも妻が心配だからしっかり者のアリスを妻のもとへ残したのだろう。

 父に昔の思い出を話すアリスを「そうだっけ?」とかわし、アリスの今の生活を聞き出す父親。微妙に会話のベクトルが違う。

 アリスは父が大好きで父との思い出がとても大切。そして頻繁に会いたいのだけど、父はやんわりとかわし、その気持ちに応えようとしない。もしかしたら別に家庭を持ってるのかも?

 別れ際、アリスは父親に気持ちを伝えるのだが、父は伝わってないのかごまかしたのか?

 二人のシーン、最初は普通の高校生くらいの娘がそうであるように、アリスが父と距離を置いているのかと思ったら、実は逆であることがわかる。演出がニクい。

 この二人のシーンでグッと映画に引き込まれた。

 ちなみにこのシーンでいくつかの重要な伏線アイテムが登場。その後、父親との大事な思い出を宮本先輩を通して辿るアリスがとっても切ない。

 さらに、なんだかやる気なさそうなのに何でそんなにいくつも受けるんだと思っていたオーディションも、土砂降りの雨の日にアリスが真剣だったことがわかるし、最終的には宮本先輩と相思相愛であることに気づきつつハナのために身を引くし、登校拒否児童だったハナを復帰させたのがアリスだったこともわかる。

おぢさん、アリスにぞっこん(爆)

この娘、エエ娘や!←なぜか関西弁

 うちの娘もアリスみたいに友情を大切にして一生懸命生きる娘になって欲しいなぁ(しみじみ)
 友情は大切にしているようですけどね(誰も聞いてないって)
画像

 宮本先輩とのデート中に嘘がばれてから別れるまでの蒼井優の演技は本当に素晴らしい。
蒼井優は有栖川徹子に演技指導してあげれば良いのに(違)

 あ、終盤に嘘を白状する鈴木杏の熱演も良いぞ。一応(ぉぃ

 そして、アリスが“いつもどおり”落ちそうになったオーディションでバレエを披露して一発逆転のシーンはお約束というか、蒼井優にそれをやらせるのは映画として反則だろうと思いつつも感動モノ。
 「減るもんじゃないので」と言ってミニスカートの高校の制服のままで踊るアリス。大沢たかおの立ち位置が変わることで、周囲がどれだけそのバレエに引き込まれたかがわかる。

 しなやかに伸びやかに踊る姿、神経が行き届いた手先足先の動きから束ねた髪の動きまですべてが美しい。

・・・だから広末さん、パンチラばかりを強調しないように(笑)

 二人の日常がちょっとだけ変わったことを示して映画は終わる。多分どこにでもありそうな(ないか?)女子高生の日常の一コマを切り取った映画。
 美しい音楽に美しい映像。蒼井優が出演していなかったら、フラガールの名演がなかったら見なかったかも知れない。

【出演】
鈴木杏/蒼井優/郭智博
相田翔子/平泉成/木村多江/阿部寛/木村多江/大沢たかお/広末涼子/ルー大柴/アジャ・コング/叶美香/テリー伊藤/吉岡秀隆/他




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