クルトンパパさんの「
喫煙も自己責任だし、病気もそうだよ」のタイトル見て、一瞬ギョッとしたけれど、仰せのとおりですね。
アメリカの訴訟ネタで行くと「
マクドナルドを食べ過ぎて肥満になったので賠償しろ」なんてすごいのありますよね。まぁ、アメリカにおいても「公知の危険性に対してまでは賠償責任が及ばない」ということです。
確かに、喫煙の危険性よりハンバーガー過食の危険性の方が因果関係においても明らかですが(笑)。ついでに言うと受動喫煙については「公知の危険性」とは言えないので健康増進法が制定されたわけです。
ところで、
イラクの日本人人質事件以降「自己責任」と言えば当事者が責任を取らなくても良いと勘違いしている馬鹿野郎が増殖しています。 ブロガーや2ちゃんねらーの中にも
政府やマスコミのこれ幸いと言った強烈な「自己責任」プロパガンダに洗脳されている人もいるようですが、本当にみんな「自己責任」なんですかね?
「公知(つまり、周知の事実での)の危険性」かどうかで考えればわかります。
米国産牛肉を食べるのは自己責任?
昨年、総理の特別補佐官だった岡本行夫氏などが言ってたように思います。今回の緊急輸入停止もやり過ぎだなんて言ってる人がいたような?
果たしてそうかな?
こんなページを見つけたので読んでみてください。とある大学のゼミ生のレポートです。後半のマクドナルドの訴訟が本題ですが、読んでいてぞっとするのは「もっとも危険な仕事」についてのくだり。
私はこれ読んで米国産牛肉なんて食いたくないって思いましたね。正確に危険部位を取り除くなんて出来るはずがないと。だから成田の検疫で特定危険部位が発見された時も全然驚きませんでした。
日経BPの記事でも「アメリカの飼育規模が日本の約20倍、と畜(食用を目的に獣畜を殺すこと)規模が約30倍」と書いてますから、上記レポートは大げさでもなんでもないでしょう。
「じゃあ、米国産牛を食べなきゃ良いじゃないか」と思う方、これを読んでみてください。
Q20 牛肉を原料とした全ての加工食品に原料原産地表示を義務付けるべきではないでしょうか。
?? (前略)牛肉を使用した加工食品についても、その製造過程で原産地の異なる部分肉を混合して使用する場合があり、牛肉を使用した全ての加工食品について、原料牛肉の原産地表示を義務付けることは困難であると考えています。(後略)
農水省の「
米国・カナダ産牛肉の輸入再開について(Q&A)」(H17.12.12)の一部です。全部で25問のQ&Aが書かれていますが、国産牛のように固体識別を導入することについては「WTO協定に抵触するおそれがある」と回答するなど、見事な及び腰(笑)です。
これを読むと「自己責任」で米国産牛肉を避けることはできないことがわかります。つまり「公知の危険性」にはならないと言う事です。
二度と輸入再開しなくて良いですから!(笑)
耐震偽装マンションの購入は自己責任?
「ハイリスク」とはのエントリでも触れましたが、こんなの「自己責任」なはずがない。
国の「不作為」に言及 耐震偽装で武部自民幹事長(前略) 「住民に政府はどの程度補償するのか」との出席者の質問に答えた。マンション住民の「自己責任」もあると述べつつも、「建築確認制度があるのに何で放置されたままになっていたのか。責任をだれがどの程度負うべきか」について解明すべきだとの考えを示したものだ。
とりあえず武部は辞めろ(怒)。個人的には辞任してもおかしくないぐらいの暴言だと思うぞ。
この事件では、民間検査機関もお役所も「偽装しているという前提にはないので」とか「性善説に基づいてますので」とか散々ヨタごとを語ってましたが、結局何にもチェックせず、書類を右から左に渡していただけということがわかりました。
それでも「自己責任」だと言いたいなら「マンションの耐震強度は、建築主の申請どおりの数値を記載しており、実際に検査によって基準を満たしていることを保証しているものではありません」と表記してみれば良い。日本中パニックになるから(笑)
建物の建築に際しては「建築基準法」という一定のルールがあって、建築の認可によって、それを満たしている(建築基準に合致していることを国が保証している)からこそ安心して購入できるのです。その基準を満たしていない住居を売っている時点で犯罪であり、それを許すのは国の怠慢であり、国が厳しく責任を問われても当然ということです。
ライブドアショックは自己責任?
こちらも
「ハイリスク」とはのエントリで触れましたが、やっぱり「自己責任」なはずがない。
ライブドアショックで株価が下がったけれど自己責任だと言っているブロガーがかなりいるが本当にそうかな?金融庁も東証も責任を全部ホリエモンに擦り付けたいようだけれど、個人が迎合する必要は全くないと思います。
そもそも責任の所在がまだはっきりしていないのに「自己責任」だと引き下がるのは単なる泣き寝入りだと思う。
確かに
投資は自己責任で預金に比べて「ハイリスクハイリターン」だが、そこにも一定のルールがあるはず。ライブドアが法を犯していた時点で、それは「公知の危険性」ではないはずです。
「東証では個々の企業の粉飾決算については感知しておりません」とでも但し書きしてみますか?(笑)
これについては朝日新聞が1月27日付け社説「
市場の番人 悪知恵に負けぬ態勢を」で
珍しく正論を書いていますね。
手元に1997年に出された証券取引審議会の報告書がある。市場に大幅な規制緩和をもたらした「日本版ビッグバン」の基本設計ともいえる文書だ。そこにこんな一節がある。
「情報や交渉力の面で不利な立場にある一般の投資家が、不当な扱いを受けることがないとの信頼感をもって参加できる市場でなければならない」
政府が音頭をとった大改革の合言葉は、「フリー」「フェア」「グローバル」だったが、このなかで、「フェア」すなわち公正さは軽んじられてきた。ライブドア事件で明らかになった容疑をみる限り、そう思わざるを得ない。
堀江貴文容疑者を「拝金主義」と批判する声は強いが、より本質的な罪は市場への信頼を損ねたことにある。
ライブドアの株主でない投資家の間にまで、ニセ情報に踊らされるのではとの不信が広がっている。政府が「貯蓄から投資へ」と旗を振っても、粉飾の横行を許すようでは市場の体をなさない。
東京地検には全容を洗い出してほしいが、地検が出る前に防ぐことはできなかっただろうか。(以下省略)
私は「現時点で合法」なことまでとやかく言うつもりはないが、粉飾決算などの不法行為を見過ごした責任が金融庁や東京証券取引所にあるのは明らかです。
もし、ライブドアショックで多くの個人投資家が損失を被ったことを「自己責任」というなら、みずほ証券の株誤発注など、東証のシステムに不具合があったとしても
完全な合法手続きの上で行われた商取引なのだから何の救済措置も不要なはず。だいたい
操作員が単純ミスをしているのだから完全に「自己責任」でしょうよ(笑)。
それを与謝野金融担当相が「美しくない」と言ったから救済ですか?誰か不法行為で逮捕されましたか?
これぞ株式市場が著しく「フェア」ではない証しだと思うのは私だけですかね?(苦笑)

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