2007年2月3日土曜日

【大淀病院“事件”】結局は産院が減っただけ。

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 ちょっと気になっていて、ずっと関連記事や関係ブログを読んでいたんだけど、結局は不起訴ということらしい。

奈良妊婦死亡:転送先探し難航の末、立件は見送り
 奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年8月、意識不明となった妊婦の高崎実香さん(当時32歳)が転送先探しが難航した末、死亡した問題で、奈良県警は、業務上過失致死容疑での同病院医師らの立件を見送る方針を固めた。死因となった脳内出血と、担当医が診断した子癇(しかん)発作との判別は困難で、刑事責任を問えないと判断した。今月中に遺族に捜査の経緯を説明し、最終判断する。

 病院側は問題発覚直後の会見で、「脳内出血でなく、子癇発作の疑いとした点で判断ミスがあった」と発言。県警は任意で提出されたカルテなどを基に専門家約20人に意見を求めたが、脳内出血と子癇発作は、意識喪失やけいれんなどの症状が似ているため識別が困難との意見が大半を占めた。さらに、遺体が司法解剖されず、法医学的な証拠に乏しい点も捜査を難しくしたとみられる。

 高崎さんは昨年8月8日午前0時ごろ、分娩(ぶんべん)中に意識不明に陥った。19病院に受け入れ不能とされた。結局、約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に搬送され、男児を出産後、死亡した。【高瀬浩平】

毎日新聞 2007年2月2日 3時00分
 つまり、結論は「事件性がなかった」ということだよね。

 私は医療関係はど素人だからよくわからないけれど、ウェブサイトで医療関連の専門家と思える方たちがこの事件にコメントしているのを読むと、この担当医師が最善を尽くしたことは間違いなさそうだ。記事中も専門家20人に意見を求めた結果立件を見送ったことが書かれている。

 それに、粘り強く19病院に受け入交渉をして拒絶され、やっと搬送された病院で死亡したことは担当医師の“過失”とはなんら関係ないと思う。

 この事件に関する報道で毎日新聞(労組)は「奈良・大淀病院妊婦死亡」をはじめとする全国の母子救急医療搬送システムの未整備を問う一連のスクープと検証キャンペーン」が評価され、「第11回新聞労連ジャーナリスト特別賞」を受賞している。

 だが、なぜこれが“母子救急医療搬送システムの未整備”なのか素人には全然理解できない。

 「医者と病院(ベッド)が足りない」のが問題じゃないのか?

 先日の無資格助産問題も起訴猶予。これもやっぱり「医者(ここでは助産師)と病院(ベッド)が足りない」ということじゃないのかな?

 読売新聞は、2月2日付の社説で、無資格助産は「助産師が足りない」ことと厚生労働省の制度と運用に対する不備が問題であることを指摘している。

 こちらの方がずっとわかりやすく、説得力がある。

 なぜ「奈良・大淀病院妊婦死亡」が全国の母子救急医療搬送システムの未整備を問う一連のスクープの「はじめ」なのか全然理解できない。そんな検証キャンペーンやるより、記事の検証をすべきじゃないのか?

 「医療の素人が意見を言うな」と言うなら「そんなわからない記事を一般紙に載せるな」と言いいたい。

 不幸にも奥さんを亡くした方は本当にお気の毒というしかなく、医療に納得できない部分があるのも理解できるが、だからと言ってこのケースを医師のせいや救急医療搬送システムの問題にするのは違っている気がする。

 結局、大淀病院から産院がなくなり、奈良県南部からお産ができる病院がなくなってしまったらしい。
 産院がなくなったから、判断ミス(誤診?)もなくなり、搬送システムも不要になった。毎日新聞からすればメデタシメデタシだ。

 しかし、「医者と病院(ベッド)が足りない」状況は確実に深刻化した!

 事件性がないことをスクープにしてこじつけたキャンペーンを行い、妊婦から病院を遠ざけたことは、新聞社として、或いはジャーナリズムとして、誇らしいことなのか?

 そんなジャーナリズムは要らない。

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4 件のコメント:

  1. 物凄くもっともな意見です。ある意味で感動です。素晴らしいです。合理的です。
    こう考えてくれる人が多くなるといいのですが…。

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  2. さとし@快投乱打2007年2月4日 9:22

    ないかいさん>
     今朝フジテレビで放送していた「知的冒険 ハッケン!!」の中で小倉智昭氏と渡辺淳一氏が医師が大都市の大病院に集中している現実をあげて「若い意欲ある医者が地方で働こうと思うシステムを作らないと」という話をしていました。
     前段でレポーターが救急指定を取り下げた地方の公立病院(民営化予定)をバッシングするような話をしたのを受けた小倉智昭氏が反論し、そういう展開になったのでちょっと意外でした。多分小倉氏のコメントはアドリブなんでしょうね。
     

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  3. すばらしいご意見ありがとうございます!
    加藤先生の事件と今回の事件の報道のありかたにほとほと嫌気がさしていましたが
    こういう方もいるのだ、と励みにして
    もう少し産科をやめずにがんばります(涙)

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  4. さとし@快投乱打2007年2月8日 18:19

    さんかいさん>
    とんでもないですよ。
     我が家は長女誕生の時、夜中に羊膜破裂が破裂して緊急手術でした。近くにすぐ手術ができる産科医さんがいらっしゃるのは本当にありがたいことです。
     これからもがんばってください。

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