これ1枚しか聴かなければちょっと危険かも知れないけれど演奏自体は「素晴らしい」の一言に尽きます。
色々と調べてみると、ツィマーマンはこの曲のテーマを「感情の発露」と解釈したそうで、正にそういう演奏です。
しかもオケとのバランスは別としてピアノの音が素晴らしい、低音から高音まで見事に響いています。録音技術もさることながら、マイピアノを持ち運び、会場の音響に合わせて調律するという完璧主義者のツィマーマンだからこそここまで鳴っているんだと思います。
しかも3楽章の終局部分で、“千秋”やアシュケナージも突っ走っているところを一旦タメるなんて心憎いばかりです。まだピアニストとしては若造だったシューマンのピアノ協奏曲収録時に巨匠カラヤンに意見したと言われるツィマーマンですから、マエストロ小澤との綿密な打ち合わせがあったのでしょう。
それにしても、ここまで情熱的にドラマチックに演奏されたピアノ協奏曲を聴いたことがない・・・ことはない(笑)
というわけで、CD棚から取り出して聴き直しました。
キリル・コンドラシン指揮、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。
曲はもちろん、ラフマニノフの2番とともに“2大ピアノ協奏曲”といわれる名曲です。
そして、オケをドラマチックに鳴らす指揮者としては最高ではないかと思うキリル・コンドラシン。
余談ですが(そのうちブログにちゃんと書くつもりですが)、コンドラシンとACOによるリムスキー=コルサコフの「交響組曲シェヘラザード」はオケの極致ではないかと思える最高にドラマチックで美しい演奏を聴かせてくれます。
というわけで、ピアノ界の女帝(ぉぃ)アルゲリッチとオケ界の魔術師(というより悪魔)のようなコンドラシンの指揮によるバイエルン交響楽団の演奏、特に3楽章の“暴走”ぶりは凄いです。発売当時は「ピアノから火が出るような演奏」という表現が使われていたように思います。
火を出しているのはアルゲリッチだけど、焚き付けているのはコンドラシン。オケが煽ってピアノがそれに応えているような異常な雰囲気。尋常ではありません。しかもこれ、ライブ録音ですから!(爆)
アルゲリッチがまるでピアノに掴みかかるようにそのでかい手を広げてガガガガガーッとオクターブ音の速弾きをしている姿が目に浮かんで来ます(笑)
最初に聴いた時は終局部分で演奏が破綻してるんじゃないかと思ったんですが、女帝は最後まで弾ききってますね。
きっと観客はこの世の物とは思えない演奏を目の当たりにしたんでしょう。
これはこれで、これしか聴いていないと危険な1枚かも知れません。
コンドラシンは西側へ亡命してわずか3年、ツィマーマンが25歳の時に急逝しています。もしこの2人でピアノ協奏曲が実現していたらどんな演奏が聴けたか、想像しただけで背筋が寒くなります(笑)
【追記】
チィマーマンのラフマニノフはMP3に圧縮することはお勧めしません。ピアノの響きが明らかにやせ細ってしまいます。
【追記の追記】
コンドラシン/ツィマーマンはブラームスのピアノ協奏曲で競演した音源があるようですね。どんなんだろう?


きょうはここへさとし(うっちー)がblogされた!
返信削除うっちーはblogしたいです。