悲しいかな、著者の名前がウルトラQ世代には“まんじょうめ”としか読めない万城目学(まきめ まなぶ)の代表作。なかなかの快作で、直木賞候補になったというのも頷ける。
まず、読み始めて「ああ、これは夏目漱石の『坊っちゃん』のパロディだな」とすぐわかった。
ヒロインの苗字が“堀田”なのは『坊っちゃん』の登場人物“山嵐”の苗字だし、マドンナと呼ばれる女性も登場する。しかも『坊っちゃん』では、最初は堀田は生徒を先導して「おれ」をいじめた疑惑をもたれている(笑)
さらに「パンツ三枚千円」のくだりは「天麩羅蕎麦四杯」そのまんまの展開!
違うのは、主人公が無鉄砲でもなんでもない、神経質な男!!(爆)
なかなか軽快なテンポで書かれた導入部を読み進んで面白く感じたのは、主人公の「おれ(先生)」が、“神経が細かい”とか“神経衰弱”と言われて反発しているのに、読者にはその行動が確かに“神経が細かい”と納得できること。一人称の小説で主人公が否定しているのに、読者は「こいつ神経が細かいな」と納得できること。
この辺の描写がなかなか楽しい。しかも最後にきちんとオチまで付く(笑)
そして、中盤は“ヒロイン”堀田イトの大活躍。剣道のシーンは、中学まで剣道をしていた娘も評価する迫真の描写。
ぶつかり合って鍔迫り合いという剣道も迫力あるけれど、堀田イトのような綺麗に打って出て綺麗に決まる剣道は実際見ていて非情に気持ちいい。だからマドンナも誉めたのかなという気がする。
ところでこのヒロイン、なぜに“イト”なんて古風な名前なんだろうと思ったら、『魏志倭人伝』の「伊都国」から来ているようですね。
で、剣道の試合で盛り上がって遂に優勝!!
・・・が、ただの無駄足、骨折り損って(汗
なんだか肩透かし。このまま盛り上がって終わった方が良かった気がしないでもないけれど、ここから一ひねりして、「サンカク」を“盗んだ”犯人探しの終盤へ。
「笑撃のラスト」までなかなか楽しく読めましたよ。
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